双子座新月- 天空の劇場は「言葉」を舞台にした

人類はなぜ「逃げたい」のか――タイムスリップ・異世界ブームを占星術師が読み解く

アイキャッチ:転生しても、まずごはんが食べたい日本人。日本・韓国・中国・アメリカの異世界転生の違いを描いたイラスト 宇宙的シンクロニシティ

Netflixを開くたびに思う。

韓ドラも、中国ドラマも、日本のアニメも、なぜかことごとく「別の時代に飛ぶ」系ばかりだ。主人公は気づけば平安時代にいたり、朝鮮王朝の宮廷にいたり、剣と魔法のファンタジー世界にいたりする⚔️。
これだけ国をまたいで同じテーマが流行るのは、さすがに偶然ではないだろうと思い、少し掘り下げてみることにした。

すると、人類の「ここではないどこかへ行きたい」という欲望は、ずっとずっと昔からあったことがわかった。


紀元前から人類は「逃げて」いた――インドの「1億年」?

タイムスリップ願望の起源を辿ると、古代インドの叙事詩『マハーバーラタ』にたどり着く。

『マハーバーラタ』は紀元前数世紀から口承で伝えられてきた、世界最長の叙事詩のひとつ。ギリシャ神話やローマ神話と並ぶ古代文学の金字塔だが、スケールがほかと一線を画している。

その中にこんな話がある。

ある人物が神様のもとへ行き、しばらく話し込んだ。体感時間にして20分ほど。そして地上に戻ってみると、1億年!が経過していた。(インドの時間観念では、神のもとでの一瞬が地上の1億年に相当するとも語られる)

最近の韓国ドラマや中国ドラマが「数十年前に戻る」「王朝時代にタイムスリップ」というスケールなのに対し、インドは最初から1億年だ。
1億年後の地球がどうなっているかなど、現代の科学でも正確には予測できない。大陸の形も変わり、生物の種も変わり、もしかしたら人類という種そのものが存在しない可能性すらある。そんな時間軸を、紀元前の人間がすでに物語として描いていたのだな。

「現実から逃げたい」という欲望。それは、人類が文字を持つ以前から、本能に刷り込まれていたのかもしれない。


なぜ世界同時多発でブームが起きているのか

面白いのは、このブームが日本だけの現象ではないという点である。

韓国では「回帰もの」と呼ばれる「人生2周目」系のドラマが社会現象になっている。
『財閥家の末息子』『私の夫と結婚して』など、主人公が記憶を持ったまま過去に戻り、未来の知識を使って復讐や逆転を果たす物語だ。

中国では「穿越(チュアンユエ)」と呼ばれるタイムスリップものが根強い人気を誇り、アメリカでは「LitRPG」という、ゲームの世界に迷い込んでレベルアップしていく小説ジャンルが爆発的に広がっているらしい。

国もジャンルも違うのに、なぜ今、これだけ世界中で同時に「ここではないどこかへ」という物語が求められているのか。

答えを探していくと、とても興味深いことがわかってきた。

国によって、「逃げ方の質」がまったく違うのだ。

主なジャンル主人公の目的現代の知識の使い道
🇯🇵 日本異世界転生(なろう系)現代社会に疲れ、別の世界で承認欲求を満たしたりスローライフを送りたいチート魔法や、現代のメシ・技術(醤油、マヨネーズ、内政など)の再現
🇰🇷 韓国人生2周目(回帰)自分をハメた奴ら(財閥や裏切り者)に、同じ現代で完璧な復讐を果たす土地の買収、株、ビットコインなど、ガチのマネーゲームと権力闘争
🇨🇳 中国架空歴史(穿越)厳しい階級社会から抜け出し、現代知識で圧倒的な成功(富・権力)を掴む近代的な商業システム、工業技術、経済学を用いた国取り・商売無双
🇺🇸 アメリカLitRPG・ポータルファンタジー明確なルールのゲーム世界で、自力の戦略とレベル上げで頂点を目指すゲームシステムのハック、スキルビルド、フロンティア精神の発揮

日本人は、転生したら最初からチートが欲しい民族だったのか?

韓国人は過去に戻っても不動産を買い占め、中国人は古代で会社を興し、アメリカ人はレベル上げを始める。「逃げ方」にその国のDNAが出るようだ。

転生しても、まずごはんが食べたい日本人?

同じ「現実から逃げたい」という感情を持ちながら、
・日本人は「もう戦いたくない、ゆっくりしたい」と言い、
・韓国人は「今度こそ絶対に勝つ」と歯を食いしばり、
・中国人は古代で会社を興し、
・アメリカ人はゲームのステータス画面を眺めながらレベルを上げる。

これは単なるエンタメの好みの違いではなく、それぞれの国が抱える「生々しい社会の歪み」がそのまま物語に反映された結果と言えないか?
韓国のドラマが「財閥への復讐」を描くのは、実際に超格差社会の閉塞感が若者を追い詰めているからだし、日本のなろう系が「何もせずチヤホヤされたい」という方向に振れたのは、30年以上「頑張っても報われない社会」を生き続けてきた蓄積があるように感じる。

日本・韓国・中国・アメリカの『異世界・タイムスリップ』の逃げ方の違いを表した

占星術師として言えること――「季節」と「服装」は別物

ここで占星術師として、ひとこと。

木星と土星が約20年ごとに重なる「グレート・コンジャンクション」は、社会の価値観をリセットし、人々の「理想の逃げ場」を更新するタイミングとしても機能するだろう。
「理想・拡大」を司る木星と、「現実・制限」を司る土星が重なるこの瞬間に、人々の「こうあってほしい未来」の形が更新される。

さらに2020年には「風の時代」への移行という、200年ぶりの大パラダイムシフトが起きた。それまでの約200年間、人類は「地の時代」──物質、お金、土地、組織、固定観念が支配する時代──を生きてきた。しかし2020年を境に、情報・ネットワーク・仮想空間・精神・境界線を超えることに価値が移行する「風の時代」が始まった。

確かにこのエネルギーが、世界同時多発的な「次元を超えたい欲求」を後押ししている面はある。

ただし、占星術が示すのはあくまで「季節」

「いま世界は冬を迎えていて、みんな寒がっている」という共通項は星が教えてくれる。しかし「どんな防寒着を着るか」は、その国の文化・社会・歴史が決める。

日本人は部屋にこもってこたつに入り、韓国人は筋トレして体温を上げ、中国人はお上の指示に従って薪を燃やし、アメリカ人はサバイバルマニュアルを読み込む。

エンタメのフックになるのは、結局その国の人々が毎日直面している「生々しい社会の歪み」だ。星はあくまで「その気持ち、わかるよ」と背中を押しているだけで、人間が逃げ込む先の形は、星ではなくその国のリアルが決める。


そして1億年後、人類は5cmになっている

話をインドの時間軸に戻そう。

先日、カトマンズの占星術師(ジョティーシュ)と話した記事を書いた。その中で彼はこんなことを言った。

「未来の人間は5cmになる」

宇宙の膨張に伴い、相対的に人類の体は小さくなっていく──というよりも、地球の環境悪化説だ。突拍子もないと思うかもしれないが、インドの宇宙観では「それくらいのことは普通に起きる」という感覚がある。

では、5cmになった人類が直面する最大の敵は何か。

おそらく、・・・ゴキブリ?

あの生き物、体長比で計算するとどれだけヤバいかがわかる。ゴキブリは1秒間に自分の体長の50倍の距離を走ることができる。これを人間サイズに換算すると、時速300km超・新幹線並みになる。

しかも速度だけではない。ゴキブリは0.05秒でトップスピードに達し、脳を介さない反射回路で動くため、こちらが「あ、Gだ」と認識した時点でもう逃げ切られている。3億年前から存在し、核戦争も氷河期も生き延びてきた最強の生存マシンだ。

5cmの人類にとっては、完全に怪物であり最大の敵かもしれない。

そう、まさに『テラフォーマーズ』の世界だ。火星でゴキブリが巨大化し、人類と死闘を繰り広げるあの漫画。当初はフィクションとして考えていたが、5cm人類説と組み合わせると、あながち笑えなくなってくる。

マハーバーラタの1億年後、地球に戻った人類は何と戦っているだろうか。
あなたも、タイムスリップして確かめに行きたいですか?

――ちなみにわたしはその答えのヒントを探して、13年前にフィリピンに移住した。なぜフィリピンなのか、そしてなぜ日本人だけが「転生してスローライフがいい」と言うのか。その話は次回に。



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