占星術師にインタビュー
彼は仕事場で、まだお客さんを鑑定していた。何事も、まず占いでお伺いを立てるのが当たり前のこの地である。占い師はいつも忙しい。もう7時を過ぎているというのに、順番待ちをしているおばさん達がいる。やはり女性ばかりだ。
インド・ネパールの占い事情
自分の番になると、懐から“イダモ”を取り出して、運勢や子供のことなど聞いている。 ガネッシュ・クマール・ジョシ(占星術師の名前)は昔ながらのやり方で鑑定する。
॥ श्री गणेशाय नमः॥(シュリー・ガネーシャーヤ・ナマハ)—ガネーシャ神に帰依します、と鑑定の前の祈りを捧げながら。
棒きれみたいな石のチョークで机上の小さい黒板に、計算したりチャートを書いたりしている。15分くらい喋ると、客はみんな用意してきたいくらおのお金とビニール袋に入った米を渡す。
ガネッシュはその米粒を黒板の上に落としたりしている。米粒占いをしているようだ。

サファイアとダイヤモンド
私の番だ。両親の名を聞き、私のホロスコープを作っていく。
そこからつけられるべき「私の名前の頭文字」を言ってくれる。
ネパールではイダモを見て結婚を決めるが、私もそうしないと失敗するぞ、とまず言われた。仕事や家庭など一通りの運勢を言い、2.5カラット以上のサファイアや3カラット以上のダイヤをつけなければならないと言っている。

お守りは高額 祈りは複数の神様に
「そんな高価なものなどとてもじゃないが、買えません。」
と言うと、
そう?そんなことないだろう。と言っている。
3年前、南インドのアガスティアのときにも、何カラットだかのピンクダイヤモンドをつけるといいと言われた。いまだに買う気すらないないのに。
神様関係では、アガスティアでは月曜日にシバ神に祈れと言われた。
ガネッシュには「火曜日はガネーシャ神に、土曜日にカーリー神に、そして、血液・血圧関係が弱いので日曜日にはスーリヤ(サンスクリットで太陽)にお祈りをしなさい」と言われた。

1996年、カトマンズ盆地。階段状の台座にそびえる3重のパゴダ式寺院
運命は変えられるのかーネパールの占星術師に聞く
カリカリ博士(こと「スピカ破壊占星学」を展開した、日本占星術界の鬼才)に質問したように、またもこの人に聞いてみる。
「運命は変えることができるのか?」
すると「すべてを変えることはできないが、何もしないでいるより、石をつけたり神に祈ることによって少しは良くなるのだ」と、こんな例え話をしてくれた。
「普段の服を美しいシルクのドレスに変えることはできない。しかし、洗濯をしなければすぐに穴があいて使えなくなるように、手入れをしっかりすることによって永く着られるようになる」
なるほどー。ガネッシュはたくさんの例え話を持っていて、とても納得させられる。
ノストラダムスの予言
世紀末論についても聞かねば、と質問した。
情報誌などでは、空から何か降ってくるとかいろいろ書いてあるが、そういう場合は、細かく計算しなければ何がどこに落ちるかなというとはわからないのだ。と前置きをして、こんなお話をしてくれた。

パタン・ダルバール広場。ネワール建築の寺院群が連なる
世紀末説
昔、ある占星術師がいた。妻の出産の際、「生まれたら鐘を鳴らしてくれ」と頼んで外で待っていた。鐘の音を聞いてホロスコープを作ると、どうもこの子供は自分の子ではない、と思って家を出てしまった。妻子の知らぬところで有名な占星術師となったが、その子供もまた成長して占星術師となった。
その頃、国では世紀末説が流れており、国王もそれを恐れて全国の占星術師を集めた。その予言とは——空から魚が降ってくる。もしその魚が地上に落ちて死んでしまうと、世界は大変なことになる——というものだった。
占星術師の父と子の物語
集められた予言者の中には、お互いそうとは知らぬ父と息子もいた。有名な父ー占星術師の答えに従って、国王はその答えの場所に大きな池を造った。こうしておけば、もし魚が落ちてきても、大丈夫、と言って。
まだ名前のとおっていない若い息子の方の予言では、アサン(カトマンズの旧王朝のある場所)と出ていたので、とりあえず小さな池を造っておいた。

1996年、カトマンズ・ボダナート。チベット仏教の聖地、仏陀の目が四方を見渡す
天から魚が降ってきた
かくして、魚は降ってきた。それは息子の予言した、小さい池の中に落ちてきたのだ。
父は、“私の方が有名で、計算もよくできるはずなのに”と、その若い占星術師に尋ねた。すると、「あなたの計算は間違ってはいないみたいだが、空気(風)の計算を入れるのを忘れています。」と言われた。
その瞬間、「あーっ!」と、子供が生まれたときの事を思い出した。 あの時、生まれてから鐘を鳴らしてもらい、自分の耳に届くまでの間の、細かい計算をとばしていたのだ。
正しくホロスコープを作り直すと、自分の息子は偉い占星術師になると読めた。今、目の前のこの若い占星術師が、自分の息子だとわかったのである。
そして家に帰って妻に理由を話し、幸せに過ごしたらしい。
ーという話のように、それくらい細かく計算しないと、何がどこに落ちるかわからないのである。しかし自分は世紀末論についてあまり興味がもてないので、計算をしたことが無いのだ。と話してくれた。

カトマンズの占星術師ガネッシュ、運命の巻物イダモを読む/ネパール1990年代ドラゴンヘッドとテール:ラーフとケートゥ
次に、西洋占星術の方では今ひとつはっきりしない、ドラゴン・ヘッド、テールについて聞いてみた。
A :ラーフ(ヘッド)とは“日陰”みたいなものである。
何か物が無いと影ができないというのと同じで、ラーフはいつも何かにくっついているのだ。運勢の良いときにラーフが来ると、もっともっと運が良くなるが、逆に悪いときに来ると、まったくもってついていないという運勢になってしまう。ケートゥは“しっぽ”であるから、ラーフよりも影響は少ない。
Q: ヒンドゥー占星術では天王星・海王星・冥王星は使わないが、使ってみようと思ったことはないのですか?
天王星・海王星・冥王星の使用
A: モダンなサイエンティスト達は使っているようだ。しかし、それも昔ながらのヒンドゥー占星術の、9つの星の中に、すでに含まれているので使わなくても良いのだ。
Q: 私には娘がいます。出産の際、計画的に予定日の近辺でこの日、この時間というふうに出産できる病院を選んでいたのです。しかし、はからずも予定日より大幅に早く生まれ出てきて、このようなホロスコープになったのですが・・・。
A :受胎した時に既に生まれ出るときは決まっているので、後から生まれ日を変更する事は難しいのである。
地球の年齢、19億5588万歳
このへんから今回の旅のテーマというように、地球・魂の話に移った。まず驚いたのが、地球の年齢である。地球の誕生日がわかればなー、と思ったのがコトの始まりだが、彼の持っている暦には年齢が載っているのだった!
1,955,885,099歳。
何と19億5588万5099才だという。
百科事典では天文学的に約46億年前に地球誕生ということになっているが、19億というのは、どういう計算によるものだろうか。
しかし天文暦に毎年載せているということは、きっと何か根拠があるのだろう。
*あとで調べた。地球という岩石が固まった日ではなく、現在の生命のサイクル、「マヌ(人類の祖)」が統治するシステムが始まってからの時間。

インタビューに苦労
ガネッシュもネワール民族だが、ネパール語というのがありながら、公用語を普段から話す人は少ない。方言のように、日常では標準語を使わないのだから、高年齢の人たちは特に、ネパール語を話せない人が多い。
同じネパールという国の中でも、カトマンズのネワール族と、ポカラのグルン族では、まったく話が通じないのだ。そして、ネパール人の識字率は、NGOの人に聞いたところによると、5分の1に満たないらしい。
占星術を知らない通訳を介して、太陽系や銀河、ホロスコープ等の、専門用語を使ってのインタビューは大変だ。ここ半年、私の一番の興味をさらっている“天の川”については、今回は聞くことができなかった。
感動的な単語 アーカーシャガンガー
“天の川”のサンスクリット語がわかっていれば、と、後で調べて、とても感動的な単語を見つけることができた。
英語だとミルキー・ウェイといって「道」だが、サンスクリットでは「アーカーシャー・ガンガー」という。日本語と同じ、川という単語のガンガーがついている。
アーカーシャーとは、虚空ともいうが、火・地・風・水の4エレメントのまとめ役・空である。 五重塔や灯ろうなども下から順に、地・水・火・風・空、とならんでいる。一番上の空は、現在・過去・未来――すべて記憶されているエーテルのことをさす。
空(くう)とは、やはり天の川のことだったのだ。
次に、笛屋のラビ君も悩んでいた魂について聞いてみる。
魂について聞く
Q :前世の魂により、今の人生が決まるというのであれば、ホロスコープ通りの人生を(悪くても)生きると、魂は喜ぶのでしょうか?
A :前世にいいことをしたら今世もいい人生になるが、魂が決めるわけでなく、自然界のルールにより自然にそうなるのだ。
といって例のごとく例え話をしてくれる―4つのタイプの人間がいるという。
4タイプの人間
1:酔っ払いの人生・・・この人生は今も未来も過去もない。
2:王様の人生・・・よい前世により今があり未来もある。
3:成金の人生・・・よい前世により今があって楽しいが未来はない。
4:お坊さんの人生・・・今はないが未来はある。
というように今自分がやったことで未来もそうなるのである。
Q では身体が死に、来世、魂が次のその身体に入るなら、人口は原始から爆発的に増えているのに、どこからあと一の魂は来るのでしょう。
魂は宇宙にひとつー笛屋のラビの問いへの答え
A :魂は、実は宇宙に一つだけあるのである。
太陽がひとつしかないのに10個のバケツに水を入れると太陽が10個映る。そのように、魂は宇宙にただひとつあるが、人間や動物の中にそれを映し出すところがあるから、人口がいくら増えてもそれとは関係ないのである。
――うーん。なるほど!
仏画師の息子が語りだす
Q :ではバケツの太陽は皆同じに見えるが、人間には違いがあるのでは?
ここでさっきから静かに話を聞いていた息子さんが、おもむろに話し始めた。 ――息子さんは仏画師(タンカや、曼陀羅を描く)である。
魂などの話になると、がぜん熱が入り、父ともよくその話をするらしいが、占星術は知らない。 「占ってくれ、と言っていたが時間がなくて又の機会に――」
息子A :違いがあるのは、やはりカルマによる。 しかしカルマと魂というのは一緒ではなく、カルマの違いにより運命が違うのである。
魂は皆の中にあるが、見えないので同じというのがわからないだけである。
一方、カルマは自分の頭から思考によって創り出されるので、性格や運命などに相違があるのである。 神といわれるクリシュナや釈迦も、もとは人間であるが、よい行いのカルマにより神様になったのである。
今後の人類の行方ー人間は5センチになる
Q :では今後の人類の行方は?
父に戻る――A:未来、人間はこれくらい小さくなる(と言って親指と人さし指で5センチ位とる)!!
生まれる数もどんどん減ってくる。昔はもっともっとずーっと大きかったのに…。
Q:(そういえば神話などでは巨人族だったよな)・・・どうして小さくなるのですか?
A :地球の環境が悪くなっているからだ。
と、突然現実に引き戻され、もう夜も更けてきたのでと、お開きに。
後日、出来上がりのイダモを取りにくる約束をした。ふらふらした頭で、太鼓や踊り、歌などを歌って盛り上がっている中を歩きながら、ガネッシュの笑顔を思い出した。
35年の研究
自分から興味を持ってグルに弟子入りし、35年以上研究しているだけある。占星学という公式の受け売りではなく、素人にも納得感を与えるお話の技量とジェスチャー、人間の奥深さとあたたかみ。ガネッシュの、はにかんで笑うその笑顔は、とてもかわいいのであった。

最初から読む→ https://shakti-b.jp/himalaya/


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