ユングの出生図に見るヨッドの心理学的テーマ
心理学だけではなく、「色彩論」など広いフィールドで有名なユング。まずは彼のデータ紹介を。
ユングの人物像と生い立ち(出自・両親・幼少期の体験)
出自・親の影響
- 父はスイス改革派の牧師(厳格さと強い宗教的枠組み)
- 母は精神的に不安定な側面を持ちつつも、夢や霊的世界への関心が強かった(ユングの回想録) → これが「意識(父)」と「無意識(母)」の二重世界に関心を持つ素地になったとよく言われる。
生まれ育った環境
- 1875年スイスの小さな村で誕生
- 神学と精神世界のはざまに立たされた家庭環境
性質や青年期
- 幼少期から夢や幻視体験に強く惹かれていた
- それが後に「集合的無意識」理論につながる
ユング出生図 ネイタルチャートに刻まれたヨッドの構造
ユングの出生データ
1875年7月26日 19:24:00
Kesswil TG(スイス)
心理学的テーマとヨッド象徴の響き合い
心理学者として有名ですが、神話、宗教学、哲学、医学、歴史学、夢や曼荼羅研究など、非常に広範な分野を研究した精神科医ユング。彼のネイタルチャートを見てみましょう。当然ながら、それらのキーワードをすべて含んでいるのが見てとれますね。

出生データ Astro-Databank(Rodden Rating: AA)
神に宿命付けられたユングのヨッドを見てみましょう。11ハウスの射手座火星21°と、8ハウスの天秤座木星23°がセクスタイルを形成しています。そしてその両方からクインカンクスで、3ハウスの牡牛座冥王星23°を頂点としています。
この頂点である冥王星は、デトリメントとはいえ、MC(蠍座29°)のルーラーでもあり、非常に強力です。ヨッドのアペックス(頂点)= 冥王星(MC♏29°ルーラー)!
ユングの出生図を作成直後、非常に驚いたので、2度書きました。
「神とは?人間とは?善と悪の本質とは?」と、ユングは幼少の頃から思索を巡らせました。
牧師である父親の影響(太陽と海王星90°/MCさそり座29° アペックスのヨッド)も大きかったでしょう。しかし、それを超えていかねばならない宿命、並大抵ではない壁です。壁というより、死の淵を覗き込みながら到達するような深さ。それに奥行きや重さなどがあったと想像します。
ここでユングを支え、救いとなったのは、射手座火星が哲学を語れるフィールドの存在。さらに天秤座木星は潜在意識を覗く8ハウスに滞在。良好なアスペクトで火星とタッグを組んでいました。

冥王星が象徴する「夢や死の世界の向こう側に何があるのか」というユングの探求は、深海のような闇。冥王星の扉の奥の宇宙です。
太陽と海王星がタイトな90°を形成し、通常なら狂気に取り込まれてもおかしくない。
しかし、ユングはヨッドのおかげもあって、人生に刻印された本筋に戻ってこられました。戻らされた、というべきかもしれません。

出典:Ortsmuseum Zollikon / Wikimedia Commons(Public Domain)
ユングが持って生まれた強烈なヨッド。哲学・医学・心理学や夢の研究、及び洞察などから得た知識と直観を武器とする才能。それらによって、この冥王星をMCに昇華できたと言えますね。
ポイントは、彼の経歴において、火星/木星のセクスタイルのエネルギーを余すことなく活用し、アペックスである冥王星を攻略しているところです。
ユングと冥王星の考察
ユングが生まれた1875年には、冥王星はまだ未発見でした(発見は1930年)。
つまり、当時の占星術家がユングのチャートを読むとき、この「冥王星を頂点とするヨッド」は存在しないことになります。いえ、宇宙には存在していたが、ユング自身は占星術を学びながらも、ヨッドというアスペクトは耳にしていないはずです。
それでも、私たち現代の視点から読み解くと、冥王星が象徴する「死と再生・無意識の深淵・変容の力」がユングの思想全体に響き渡っているのは明らかです。
言い換えれば、冥王星が未発見の時代に生まれたユング自身が、その象徴を心理学という形で“発見”していったとも捉えられるのです。
これは、時代と個人の「シンクロニシティ」を示す好例とも言えますね☆
次のページでは、トランジットヨッドについて触れたいと思います。そして、ヨッドを持つあなたへのメッセージを書いています。
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